手引き

安全杖を持ってから初めて手引きをした。

駅の改札で杖を持った人を見かけたのでつい声をかけてしまったのだ。ひとりで大丈夫と言われたらそのまま行くつもりだった。

周りから見たら杖の人が手引きをするというちょっと不可解な感じだったかもしれない。

杖を持った人が杖を持った人の案内をしているのだから。

全盲と視野障害の人でも同じような杖をもっているから起こることなのだけど。

幸い僕はまだ明るいところではそこそこ見えるし、見える人と全く見えない人の中間くらいにいる。

まだ中心視野はあるので転落事故にはあわなくてすむ。それだけでもやったほうがいいと思ったので声をかけさせてもらった。

僕と反対方向に向かう列車に乗るというので、列車の扉を入ったところで手すりにつかまってもらい、挨拶して列車を降りた。

列車の扉が閉まるときにふりかえると、中で席を譲ってくれてる人が見えた。

なんだか思わず、ありがとう、と言ってしまった。
声には出さなかったけれど。